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TS808はどう解釈されているのか?

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TS808はどう解釈されているのか?

Shu Suetake

歪のエフェクターには最終形というものは存在しません。私も何度“これでオーバードライブは完結した”と思ったことか。何かと理由があって(理由をつけて)、また手を出してしまうのがオーバードライブなのです。全くコレクターではないのですが、同じエフェクターを売って、また買って、を繰り返し最終的に3台買ったこともあります。そして、オーバードライブにもサブカテゴリーが存在します。“~系”と呼ばれ、基本的には歴史的に世間を賑わせたモデルが元になっています。今回はその中でアースクエイカーデバイセス(以下、EQD)の“TS系”と呼ばれるオーバードライブに焦点を当ててみます。

どのエフェクターブランドも独自の解釈とスタイルを持った“TS系”のオーバードライブを持っていますよね。EQDも同様、TS系オーバードライブがラインナップされています。PalisadesDunesPlumesの3機種。開発のきっかけは、何処に行っても“EQDのチューブスクリーマーはどれ?”と聞かれていた社長/開発者のジェイミー・スティルマンがその質問への対応に嫌気がさし、ようやく重い腰を上げました。“どうせ作るなら考えられる全てのスペックを網羅したオールスター級のペダル”をコンセプトに開発し生まれたのがPalisadesです。

チューブスクリーマー、TS808は粘りのあるミッドが特徴でキメが細かいオーバードライブ/ブースターというエフェクターです。1979年の発売以来、ギターリストを魅了し続けている伝説的なオーバードライブ。Overdrive(ゲイン)を落としてブースターとして使用しても艶のあるモッチリ感は今でも大変な人気があります。(いわずと知れたスティービー・レイ・ヴォーンの使い方ですよね。彼はTS9でしたけど。)

そしてEQDのPalisadesはそのキャラクターを残しつつ、6つのクリッピングオプション、5つのインプットキャパシターオプション、インプットバッファーのオン/オフ、ブライトスイッチのオン/オフ、2つのゲイン設定、クリーンブーストなど480通りの設定ができる、雅にモンスターなエフェクターなのです。“どうせ作るなら考えられるスペックを全て網羅したオールスター級のペダル”とはいえ、480通りの設定数とはジェイミーやりすぎじゃないか! 

驚くのはまだ早いのです。スペックは完全なモンスターなのですが、操作は至って簡単。両サイドについているロータリースイッチ、“Voice”と“Bandwidth”で基本となるサウンドを作れば50%の作業は終わり。6種のVoiceでクリッピング(歪の量)を選択し、Bandwithで音の太さを決める。後はGainとTone、これはお分かりですよね。Bright、Bufferスイッチは最後の微調整で使います。Gainは2つAとBで設定できEQDのフレキシスイッチが搭載されているので、片方のゲインは踏み込んでいる時だけ使用することもできるという優れた機能も持っています。

PalisadesはAll-in-One、痒いところに手が届く、どこに連れて行っても恥ずかしくない、超優秀オーバードライブなのです。

一方、EQDにはまだTS系オーバードライブが存在します。それはPlumes。唐草模様にも見えるそのオーバードライブはPalisadesとほぼ同時期に開発されたのですが、2019年8月にようやく日の目を見た苦労人なのです。開発後に発売されることはありませんでしたが、そのコンセプトに再びジェイミーの開発者魂に火がつきプロトタイプを再開発。本人のエフェクターボードにラインナップされ約2年間、度重なるライブ、リハーサルと微調整を経てようやく商品化となりました。やはり現場で耐え抜いてきたエフェクターは偉い!

オリジナルのTS808と比較し、よりクリアでオープン、高いヘッドルームがアンプをブリブリにドライブします。TS808はチューニングがミッドによりすぎてコンプレッション感もあるので、どうしても低域が落ち込んでしまいます。低域はそのままに、中高域をよりオープンにする事で火花飛び散る活き活きとしたサウンドになるのです。 

Volume、Gain、Toneと3つのクリッピングモードという至ってシンプルなレイアウトですが、そのパワーは計り知れません。クリッピングは1. LED(最も歪むモード)、2.(オペアンプドライブ、クリーンブースト)、3.非対称シリコン(TS808同様の歪)です。Gainは12時でオリジナルTS808のフル10ほどのゲインがあるので多彩な音作りが可能です。

そして、“Tone”。私はこのToneだけにでもお金を払う価値があると思っています。Plumesを試奏する時はアンプのEQをフラットにし、PlumesのGainをゼロにした状態でゆっくりToneを回しておいしいポイントを探ってください。程よいポイントを探し当てたらしばらくその状態で演奏してみましょう。そしてPlumesをオフにしてください。サウンドが死んだように聞こえ、2度とPlumesをオフにしたくなくなります。そこからゲインを好みの量まで上げていく、というのが試奏時のポイントです。注意)元々トレブリーなアンプはトレブルを落として試奏してください。

最後にDunes。DunesはPalisadesの良い所取りをしたエフェクターです。スペックを削り落としたStrip-Downバージョンではありません。いわば、煮詰めて作ったCondensedバージョンです。Plumesのようにギラギラしたサウンドではなく、モッチリしたミッドと使い勝手に幅が欲しいプレイヤー向きのオーバードライブです。

レイアウトはVolume、Gain、Toneに3つのクリッピング(MOSFET、オペアンプドライブ、シリコン)、更にBandwidthとBrightスイッチが搭載されています。BandwidthはストックのTS808とベースブースト、ブライトスイッチはハムバッカーやダークなアンプをご使用の際に使うと良いでしょう。

EQDの特徴として挙げておきたいのは2点。始めにどのエフェクターも直感的に音作りができます。プレイヤーの感覚のみでサウンドを作り上げていきます。大切なのは目盛りではなく、耳なのです。2つ目はノイズが極少。ノイズはプレイヤーの最大の敵であり、もちろんジェイミーも常にノイズと戦っています。 QDはまさに今でもプレイし続けているアーティストが作り出したミュージシャンのためのエフェクターです。

どうですか?EQDのTS系試したくなりましたか?


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末武 周一郎 EQDの日本国内代理店、ヤマハミュージックジャパンでEQDを担当。日本国内のブランドプロモーションをEQDのメンバーと行い、彼抜きにしては今のEQDの日本での活動は語れません。