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-月刊EQD-

ブログ POSTS

-月刊EQD-

Yuichiro Hosokawa

<Vol.6>

ゴーストエコー(ビンテージリバーブ)

<モデル発表日>

2009年

<イントロダクション>

ブランドの創始者であるジェイミー・スティルマンにEQDペダルの開発秘話やオススメの使い方などを紹介してもらいながら、エフェクター研究家である細川雄一郎(CULT)の製品レビューを通して製品の魅力を紹介していく連載『Pedal of the Month -月刊EQD-』。第5回目に紹介するのは、良質なアンプのスプリング・リバーブ・ユニットの残響サウンドを小さな筐体のペダルに落とし込んだゴーストエコー(ビンテージリバーブ)です。

細川雄一郎(CULT)

世界的にその名を知られる国内屈指のエフェクター蒐集家であり、多種多様なエフェクターを取り扱うペダル・ショップCULTを主宰する細川雄一郎。エフェクターに無償の愛を注ぎ続ける彼にEQDのペダルはどのように映っているのでしょうか?

ほんの少しの揺らぎが 心地よい浮遊感を生み出す
個性的な空間系エフェクト


“Ghost=幽霊”。幽霊という名がついたエコーとは、いったいどれほど、おどろおどろしい響きなのか?そんな期待を裏切る良質でニッチなショート・ディレイ/リバーブ・ペダル……それがGhost Echoです。

Ghost Echoはショート・ディレイの集合体が作り出すリバーブに近い効果を持っています。しかし、それが完全にリバーブかと問われれば、そう断言もできず……かといってディレイやエコーであるとも断言できません。波が砕けて小さな水しぶきが無数に飛び散るかのように、弾いた音から多数のディレイ・サウンドが一斉に生まれ、それらが重なってリバーブに近くい効果をもたらします。機材好きな人に向けて例えると、ビンソンのディスク・エコーに備わっているSwellモードにも少し近いかもしれません。

とはいえ、EQDが目指したサウンドはスプリング・リバーブとのこと。確かに、無数のショート・ディレイ・サウンドが飛び出す様子は、スプリングが揺れている音にも近いように思います。ちなみにサーフ・サウンドの代表曲に合わせてもピッタリでした。しかし、ただのスプリング・リバーブ・エミュレーターとして紹介するには、Ghost Echoはあまりにも個性的です。無数のショート・ディレイが一斉に響き始める様はとても美しく、ジャンルレスな空間系エフェクトとして認知されてもよいかもしれません。

備わっているコントロールは3つ。弾いてからディレイ・サウンドが出始めるまでの長さを決めるAttack、ディレイ・サウンドの減衰する長さを決めるDwell、ディレイ・サウンドの音量を決めるDepth、これらのシンプルなコントロール類で音色を作ります。音作りの決め手になるのはDwellで、このコントロールを上げれば上げるほど残響が深く、リバーブに近くなり、下げればショート・ディレイの雰囲気が強くなります。

このGhost Echoの最大の特徴は“ショート・ディレイの集合体”であることですが、第二の特徴としてディレイ・サウンドに微妙にモジュレーションがかかっていることが挙げられます。ほんの少しの揺らぎが特有の浮遊感、心地良さ、そしてアンサンブルに馴染みの良いディレイ・サウンドを作っており、このモジュレーションのかかり具合は調整できないながら絶妙な塩梅に固定されています。

ディレイのような、リバーブのような、でもどちらとも違う、斬新で個性的な空間系エフェクトをぜひお試しください。

ジェイミー・スティルマン(EQD代表)

EQDの創立者であり、さまざまなバンドで演奏を楽しんでいるプレイヤーでもあるジェイミー・スティルマン。独創的なアイデアをペダルとして具現化させている彼に、ゴーストエコーの開発背景について語ってもらいました。

ショート・ディレイがもたらす
新感覚のローファイ・リバーブ

初期のGhost Echoは、リバーブの“タンク”が収まるように大きな筐体を使っていました。この “タンク”とは、リバーブを生成するためのディレイICチップがいくつか載ったサーキットを入れるプラスチックのケーシングのことです。

当時の個人ビルダーにとって“タンク”は新しいテクノロジーで、それが出てくるまではスプリング・タンク(実際にスプリングが張られたボックス)を使うか、驚異的なプログラム・スキルがないとリバーブ・ペダルを作ることはできませんでした。ですが、それから時が経ち、さまざまな技術が進化したことで、リバーブ・タンクはようやくペダルボードに収まるサイズまで小型化されました。私個人としては、今でもあの“大きな”筐体が良かったと思うこともありますが、サウンド自体はほぼ変わらないし、大きなサイズの筐体が良いという明確な理由も特にありません。

開発に際して、理論どおりにパーツを使ってペダルを作っても何も問題はなかったのですが、私としては何か“違う要素”が欲しくて、いろいろなアイデアを試しました。そしてリバーブ・タンクの前にショート・ディレイを組み込むことを思いつきました。その効果は絶大で、リバーブに新しいディメンション(空間の広がり)を与えたうえに、スプリング・リバーブの減衰とフィードバックをうまくシミュレートできるようになりました。私はEQDの製品ラインナップの中で、このゴーストエコーが一番好きなリバーブです。その理由は、ちょうどいい具合に私の好きなローファイな空間を作り出してくれるからです。

私がオススメするゴーストエコーの使い方は、ギターからのシグナル・チェーンの一番最後にゴーストエコーをセットし、クランチ・サウンドに設定したアンプで鳴らすやり方です。私はそのように使っていますが、実際にはどんなアンプのどんな設定でも、どこに配置したとしても活躍してくれる素晴らしいリバーブに仕上がっています。クリッピングしやすいペダルですが、それも含めて良いサウンドだと思っています。

またゴーストエコーは、2022年にロサンゼルスを拠点とするストリート・ウェア・ブランドであるブレインデッドとコラボレートした限定版を発売しました。ブレインデッドからいくつかの商品でコラボしないかという提案があり、私たちは楽器系以外のブランドとのコラボはおもしろいということで実現するに至りました。ブレインデッドは、私たちが好きなほかのブランドともコラボレートしていましたからね。実際に彼らと一緒の仕事は、すごく楽しかったです。とても良いマッチングでした!

Brain Deadとコラボしてゴーストエコーのデザインで、箱も特別にデザインされた物が採用されました。

Jamie’s Favorite Settings

Attack:0
Dwell:12時
Depth:11時

Attackはゼロ、Dwellは12時あたり、そしてDepthは11時くらいにすることが多いですが、冒険したいときはDepthを3時くらいまで上げて使っています。

こちらのビデオではゴーストエコーをギターとベースでデモします!


細川雄一郎(CULT)

大手楽器店にて約10年間、エフェクターの専任として勤務し、多くの著名なプロミュージシャンから信頼を集め、2016年に独立。並行して担当していた専門誌での連載コラム、各種ムック本などでの執筆活動を続けながら、ギターテックとしても活動。エフェクターのコレクターとしても世界に名を知られており、自身のエフェクター専門ウェブショップ“CULT”を2018年にオープンし、2020年には自身のコレクションに関する書籍『CULT of Pedals』を執筆、リットーミュージックより出版された。ペダル以外にハンバーガーをこよなく愛し、ハンバーガーに関する書籍などにも登場することがある。

 

 尾藤雅哉

2005年にリットーミュージック『ギター・マガジン』編集部でキャリアをスタートし、2014年からは『ギター・マガジン』編集長、2019年には同誌プロデューサーを歴任。担当編集書籍として『アベフトシ / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT』、『CULT of Pedal』など。2021年に独立し、真島昌利『ROCK&ROLL RECORDER』、チバユウスケ『EVE OF DESTRUCTION』、古市コータロー『Heroes In My Life』の企画・編集を手がける。2024年には、コンテンツ・カンパニー“BITTERS.inc”を設立。

 

西槇太一 

1980年東京生まれ。8年間ほどミュージシャンのマネージメント経験を経て、フォトグラファーに転身。スタジアムからライブハウスまで、さまざまなアーティストのライブで巻き起こる熱狂の瞬間を記録した写真の数々は、多方面から大きな支持を集めている。またミュージシャンの宣材写真やCDを始めとする音楽作品のジャケット、さらには楽器メーカーの製品写真の撮影なども手がけるなど、音楽シーンを中心に精力的に活動中。また自身のライフワークとして撮り続けている“家族写真”にスポットを当てた個展も不定期に開催している。