オーバードライブからディストーションまで:Plumes/Special Crankerを比べます!
takahiro tozawa
オーバードライブやディストーションを選ぶ事ってのは、ほとんどのギターリストには重要な事だと思います。沢山の人が(自分も含めて)歪みの音色はプレイヤーとしてのキャラクターを決定付けるものだからです。ここでのゴールはPlumesとSpecial Crankerをあなたの歪みとして選ぶ中での助けが少しでもできればという事になります。
ぱっと見はPlumesとSpecial Crankerの違いはそんなに無い様に思うかもしれません。どちらもオーバードライブ系ではあります。筐体のサイズは同じですし、ノブも三つで中央にスイッチが付いてます。価格帯も同じですし、どっちらのペダルにもEQDが特許を持っている”フレキシスイッチ”機能が搭載されています。この特殊なスイッチは”オン”と”オフ”の通常のラッチ式のスイッチともなりますし、押し込んでいる時だけ”オン”になる様なモーメンタリースイッチとしても機能します。同じ部分てのはこれくらいで、音の中身は(とっても!)違うもので、開発された背景もお互い違う方向性で行なわれました。
Plumesは歪みの定番と言っても良い緑の箱に入ってます。これは偶然じゃなくて、Tube Screamerから頂いたアイデアの解釈を広げて改良させてもらったアースクエイカーからのリスペクトなんです。Tube Screamerのゴールはトランスペアレントでは無く、凄く特定の音色を狙ったあの音なんです。歪みの音色を語る時の”Tube Screamer”ってフレーズはそれ自体が音の表現になってますよね。何故そうなったのか?回路のデザインが最初から特定の色(音色の特徴)を狙っていたからです。私達は”その”音が欲しいわけで、オーバードライブを選ぶ時はそこに行き着く事が多いと思います。アンプを唸らせるあの特徴のある中域の押し出しです。
そしてコインを裏返すとそこにはSpecial Crankerが。狙いとしてはPlumesとは反対で、原音をそのままにさらなるプラスを与える仕事をします。入力される音を変えるのが狙いでは無いのですが、音に与えるインパクトは素晴らしいです。元の音はそのままで音像を広げるとでも言いましょうか。説明書では、アンプに真空管のプリアンプを一つ足す様な使い方ができると書いてあります。Plumesはゲインの追加で特定の帯域を攻めて、Special Crankerがゲインのサチュレーションに変化を与える感じです。実際にSpecial CrankerのMoreノブはゲインの追加ではなく、トランジスターのバイアスで調整なんです。サチュレーションの足し引きができて、その効果はPlumesとは全然変わります…。結構ハマりますよ。
この二つのペダルを一緒にテストするのには自作したTweed Vibrolux (5F11)のクローンを使用しました。今まで聞いたアンプの中で一番トランスペアレントなアンプの一つだからです。それと歪みペダルを試すのに有る程度の音量まで上げてもヘッドルームが有るのが理由の一つです。使用したギター達は2013年のフェンダーテレキャスターにMojotoneの”Broadcaster”ピックアップが載ったものと、1998年のレスポールスタジオにダンカンの1959ピックアップがネックに、Alternative 8(”JB”がステロイドを打ったものと思って頂ければ)がブリッジポジションに載ってます。テストをシンプルにする為にどちらのピックアップも個別で選択しました。以下が私の印象になります。
テレキャスターのネックピックアップでは、Plumesの三つの全てのモードで深さを加えながらもクリアーさが生まれました。コードはさらに太くなり、単音も各ノートに沢山の広がりが加わりました。Gainノブは3時位の方向までは太さが足されますが、そこからすぐに歪み感が出てきて、実際に歪みが足されるのはその部分から始まります。Special Crankerはブーストしたり何かを足すよりはこのネックピックアップの音をそのまま拾って、それをもっと強くした感じになりました。どういう意味かというと、Moreノブを上げた時に音の特性自体は変わらないのですが、このネックピックアップが元から持っている音が”もっと(More)”となって出力されました。音は100%テレキャスターのネックピックアップの音です。そのまま押し上げられたというか…。面白いですよね。
Plumesをテレキャスターのブリッジピックアップで使用した際は沢山の高域と噛みつき感が得られました。実際テレキャスターに付いているほとんどのブリッジピックアップは高域の出力が大きいので簡単に歪んでしまいます。私のテレも例外では無くかなり荒々しい感じが足されて、Gainノブを歪みが生まれるポイントから上げていくとクランチの領域(若干のファズっぽさも足され)に入りました。明らかに違いますね。Special Crankerとでは、”More”ノブを低い位置に設定した時には確かに少しの歪み感が足されましたが、その歪み感はそこまでの変化を生まなかったです。すでに持っていた音と同じ特性内での変化です。これはシンプルに音全体をプッシュするのにはとても便利で、特にソロを弾く時には。
次はレスポールでPlumesを試したのですが、これも又大きな変化を加える事になります。レスポールのネックピックアップはハムバッカーなので、Gainノブが低く設定されてても歪みます。ノブを高く設定し始めるとファズの領域に入ってきます。対比としてSpecial Crankerを低い設定で試すと、中域が少しだけ強調されると同時に歪みも少しだけ加わります。そこから”More”ノブを上げるともっと膨よかなオーバードライブで、原音がジムに通ってウェイトトレーニングをした様なサウンドに仕上がりました。でしゃばらないながらも太く主張したのには驚かされました。
レスポールのブリッジピックアップとの組み合わせでは、Plumesはロックンロールマシーンなんだと証明してくれました。低い設定でも歪みの生まれる領域に入ります(初期のエアロスミスを想像してみてください)。Gainノブを上げる度にピュアなディストーションが作り出されます。Toneノブを低く設定してもオーバードライブペダルを使ってる!っと分かる程です。一方でSpecial Crankerとネックピックアップの組み合わせも同じくらい印象的でした。”More”ノブを低くすると少しの歪みと噛みつき感が得られましたが、ギターとアンプの特性はそのまま残りました。そこから”More”ノブを上げていくとサチュレーション感が増していくのですが、クランチやファズ感は生まれません。単純に太くなると。これ以外の表現はできないですね。再度になりますが、このペダルは既に気に入ってた音をもっと(”More”!)気に入らせてくれました。
この比較を要約するならば、Plumesは貴方の音を縦に広げてブーストして、音もかなりの範囲で変化させます。Special Crankerは貴方の持っている音をそのまま横に広げて太くしながらも、少しばかりの主張を音に加えると言えると思います。ライブでの使用でしたら、Special Crankerは常にオンで使うと思います。それくらい良いペダルです。Plumesは自分のサウンドを違う軌道に載せたい時に使うかと。大事な所はどちらも素晴らしい仕事をするオーバードライブペダルですが、DNAレベルでは全く違う種の物だという事です。PlumesとSpecial Crankerは音的には劇的に違う道具で、使い方を知れば知るほど音作りの幸せが噛み締められる物なのです!
Lane Sparberはアンプ、ギター、ベースやエフェクターの修理をニューヨークのクイーンズの街、Fresh Meadowsで行なっています。十代の半ばで機材の修理を始めて現在は46歳なので経験の多さが分かります。工房で機材の修理に追われていない時はランの花を育てるのが趣味。@amptech74 インスタグラムとフェイスブック www.facebook.com/lane.sparber で彼をフォーロできます!