しーっ!ギターとベースの4つのノイズ対処法
takahiro tozawa
それでは…あなたのギターやベースがとても弾きやすく音も最高だとします。でも”弾いていない時”にブーンやズーン、キーキー(あなたのバンドマネージャーから聞こえて来るものじゃないですよ…)鳴ってる事はありませんか?ナットやブリッジ後ろで弦が共振していてそれがアンプから出ている時も有ります。時にはこれらの症状はもっと大きな問題が有る事を示している時も有りますので、このブログでは音(ノイズ)が出て欲しく無い時に出てしまっている症状を改善する方法をお教えいたします。
これを始める前に一つハッキリしておきたい事が。これらのコツや秘訣はシングルコイルのピックアップには完全には通用しません。これ特有の改善できない60ヘルツのハムがどうしても付きまといますので。しかしそれでもそれに付随するノイズ、60ヘルツ特有のノイズ以外の物の対処は可能です。この点に注意して始めてみましょう!
1: アースの取り方
ノイズの多いギターを調べる時の最初の基本な所はグラウンド(日本ではアースっていう時が多いですよね)がしっかり取れているかです。グラウンドが付く部分はしっかりしていないとダメで、グラウンドの接続されている部分は丁寧に、そしてしっかりと半田されてないといけません。もしグラウンドの接続部がいい加減だったり(壊れてたり)すると、楽器が沢山のノイズやハムを拾う原因になります。もし見た目が良くなければ、半田を足しても問題ないと思います(それか半田を取り除いで最初から新しい半田を付け直すのも勿論一つの手です)。もし半田の部分の見た目が大丈夫でもダメな場合もあります。この様な半田の部分のテストとして、マルチメーターの”オーム”機能の一番低い値に設定してテストする事もできます。マルチメーターの種類によってはお互いのテスト棒を重ねて、マルチメーター自体のオームを図れる「ゼロオーム調整」ができる物も有ります。この機能があるマルチメーターを使う場合は、使用の前にこれを行いましょう。そしてテスト棒の一つを(この時点では極性は無視して良いです)をジャックのスリーブに付けて(クリップの場合はクリップで挟んで)、もう片方のテスト棒をグラウンドのギター内のグラウンドポイントのどこでも良いので(ポット類の上部や、ボリュームポットのグラウンドの足)付けます。もしマルチメーターが2か3オーム以上を指しているなら、そのグラウンドポイントは怪しいという事になります。これが0か1オーム位になるまで修理(グラウンドの半田付けやり直し)を試みます。全てのグラウンドポイントがしっかり取り付けられれれば、ノイズを減らす他の作業に移る事ができます。
2: シールドをしましょう!
私が自分の修理場で行う仕事の最も基本的な事の一つにはノイズの多い楽器のシールドを行う事です。シールドが何をするかって?効果としてはギターをシールドすると”囲い”の様な物をギターの電気的部分に作ります。これは電気回路全てをアースに落とす事です。これによってバリアー(シールドですね)を作りRFのノイズが侵入しない様にします。しっかりとシールドされたギターですと通常は、あの弦を触ってない時の”ザーっ”っていうノイズが出てこなくなり、ギターの向きを変えると出て来るあのノイズも抑えるはずです(ギターを抱えたときに右や左に方向を変えてみてください)。ギターとベースの回路のシールドの仕方は主に二つ有りますが、どちらとも下に要点をまとめてあります。忘れて欲しくない事は、どちらの方法も最初のステップとして必ず全ての電気回路のハンダを外して、部品を取り外さなければいけません。これはポットやピックアップ、ピックアップセレクター等もです。
一番一般的なシールドの作り方は、通電テープ(通常は銅で出来ている裏にテープがついている物です)をコントロールキャビティとプラスチックのキャビティを覆う部分の裏に貼り付ける方法です。そしてワイヤーをそこからアースにつなげます。もっと細かい仕事をする人たちはテープとテープのつなぎ目を細いハンダで繋げて、さらに確実にアースがしっかり取れる様にします。この方法の良い所は誰でも簡単にシールドできる事で、やり直しもできますし、楽器に無駄に手を付けなくても良い所です。短所はテープを切ったり貼ったりで時間が長く掛かる所で、テープの繋ぎ目をハンダしたければさらに作業時間は伸びます。そして、テープがキャビティーから剥がれてしまう事を見た事が有り、そうなると他の部品に当たってショートして音が全く出なくなったりしますので、この作業を行う時は完全にテープがしっかりとキャビティー内の木に張り付くかの確認が重要になります。
他の一般的な楽器をシールドする方法はコントロールキャビティ内に導電塗料を塗る事です。このキャビティ内の塗装の方法の良い所は、通電テープを切ったり貼ったりしなくても良いのでとても簡単で、通電テープが剥がれて内部の部品に当たってしまってショートする様な事も有りません。もし質の良い塗料を使えるなら、テープを使うよりもしっかりとしたシールドが形成される場合も有りますよ。この方法の欠点はやり直しができない所です。キャビティー内を塗装したらそれまで。塗装された部分を取り除くのは簡単にはできません。ですので多分この方法を1959年のレスポールには試したくないですよね。そして塗料は高いのですが、通常入手できる缶で数本のギターやベースのキャビティを塗装できるはずなので、最終的には元は取れると思います。最後に覚えておいて欲しい事は、キャビティ内の塗装は2、3回重ね塗りしないといけなく、一回の塗装後には一晩置かなければいけないので、1日の作業で行えるものではありません(その一回の塗装もテープを使う方法よりは全く早いですが)。
この部分の締めとして一つ指摘したい所は、コントロールとピックアップのキャビティが一つ以上有るならば、それらを塗料かテープを使われたメインとなるキャビティとハンダでアースを取っている部分(例としてポット類のハンダ付けされているアースの部分)を配線で繋げるよう確認しないといけません。これをしないと、アースのとられていないピックアップキャビティ(レスポールの様なピックアップセレクターも同様)がアンテナの様な働きをしてしまいノイズを呼び込む原因になってしまいます。成し遂げようとしている目的の反対ですね。私はたまに薄い銀のテープを使ってキャビティとシールドされたピックガードの裏が繋がる様にします。これをする事によって余計な穴を開けなくても済みますが、必ずしもこれがずべての楽器に使える方法ではないので以下の写真を見て確認してください。
楽器のシールドをする時は私自身どちらの二つの方法も混ぜて使っています。キャビティ内は何度か重ね塗りをして、通電テープはピックガードやコントロールキャビティのカバー等プラスチックパーツ用にします。これをする事によって両方の利点を得られて、しっかりとした物になります。貴方の必要に応じて色々試してみてください。
3: ワックス浸け
ここまではアースやシールドが原因で起こるノイズやヒスを扱ってきました。それでも”キーっ!ピーっ!”っと弦を押さえて弾いてないので音が鳴ってしまう事が有るならば、それはピックアップのマイクロフォニック現象です。それはな何かと?本質的には殆どのギターのピックアップは長く細いワイヤーが磁石の周りをぐるぐる回っているだけです。もしそのワイヤーの巻が緩いと、アンプから出ている音がそのワイヤー自体を揺らしてしまうんです。これがあのマイクロフォニックフィードバックと呼ばれるものなんです。これはロックやメタルで使いたいあのフィードバックとは違う、”良くない”フィードバックですよね。この様なノイズは誰も望みませんし、特にハイゲインの歪みを使っている時に起きて、曲中に少し弾かない様な所でも起きてしまいます。効果的にワックスに浸す事によってこの問題の殆どを解決する事ができます。
ワックスに浸けるというのは、単純に説明すると温めたワックスにピックアップを沈める事です。ピックアップがワックスと同じ温度まで上がるとワックスが巻き付けられたワイヤーの溝の中に染み込んでいきます。そしてワックスが乾くとワイヤーの緩みがワックスで固定されてワイヤーの揺れが無くなるので、あの叫び声がピックアップから出てこなくなります。極めて重要な事は、使用するワックスの溶ける温度が低い物を使う事で、この作業中にピックアップを溶かさない様にする為です(なんで知ってるかって?... 聞かないでください!)。ピックアップのワックスとして最適な素材は、パラフィン(約70%)とビーズワックス(約30%)を混ぜるのが良いと思いますが、この割合は必ずしも私と同じでなくても大丈夫です。この割合で混ぜる素材の溶ける温度は約37度位で、これでピックアップが壊れる事はありません。ロウソクのワックスは使わない方が良いですよ。
この作業を安全に行う為に私はネイルサロンで使用されるワックスを温める機械を使っています。安全に一定の低温で作動してくれます。ピックアップを浸ける前に、料理で使う様な温度計を差し込んで実際の温度を測ります。そしてビー玉を機械の底に敷き詰めて、底が一番熱い部分なのでピックアップが直接付かない様にしています。
ワックスが十分に温まったらピックアップを浸していきます。ピックアップから泡が出てくるのが見えてきます。これはワックスが巻かれたワイヤーの隙間に入っていき空気が押し出されているという事です。ピックアップが温まってくると同時にワックスももっとワイヤーの隙間に入り込んでいき、それによって空気の泡も断続的に出てきます。時間の節約をする為に何分かに一回、割り箸を入れてピックアップを丁寧に回して、ワイヤーの隙間の空気を逃してあげます。
10分から15分位ワックスに浸けると、出ていた泡が止まってくると思います。ピックアップを突いてみて泡が出てこなければ、巻かれたワイヤーの隙間にワックスが行き届いたという事になります。ここで、慎重にピックアップを小さいペンチで(ピックアップから出ているワイヤーがしっかりした物ならワイヤーを使って)引き上げます。ワックスの垂れが少なくなってきたら(15秒位だと思います)ペーパータオルでピックアップ上に付いた余分なワックスを丁寧に拭き取り、再度乾いているペーパータオルをひいて、その上で1時間か2時間位乾かします。その後安全に再度ピックアップをギターに付けれます。
この部分の仕事を上手く行えば、あなたのギターのピックアップからの叫び声は出てくる事は無いはずです。主要なメーカーのピックアップ、Gibson、Fender、Seymour Duncan、DiMarzio、Fralin(その他)はメーカーの方で既にワックスに浸けてあるので再度ワックスに浸ける事をする必要は無いはずです。しかし、特別にビンテージのスペックで作られているピックアップはワックス浸けされて無い物も有りますので、確認してください。それでもメーカーのワックス作業されたピックアップでも、再度ワックスが必要になる物も有ります(新品で自分でこの作業を行いたくなければメーカーにお願いしてください)。
最後に。ピックアップを買うときに”エポキシ”に浸かってると買いて有るなら、それは避けた方が良いです。エポキシはワックスと違って濃く、巻かれたワイヤーの内側まで入る事が殆どありません。そしてエポキシを取り除く事はできません。そのままそこに固定されます。ですので、もし将来ピックアップの巻き直しが必要になった時は余分や工賃が掛かったり、最悪の場合は巻き直しが不可能な物も有ります。知っておいた方が良い知識です。
4: スポンジを詰め込む
上の項目とは逆に、もしあなたのギターが中音から低音にかけて”ウーっ”や(上のワックスの作業をしたのに)まだハウリングが出る様でしたら、ピックアップ全体が緩んでいて振動しているかもしれません。上記の症状に見覚えがあるならこれを先ず試してみてください。その問題の有るギターを抱えてアンプの前に立ち、このノイズが聞こえてきたらピックアップを指で押さえてみてください。ある程度の力で抑えて動かない様にです。ノイズは止まりました?もしそうならここから続きを読んでください。
この現象を抑える方法はいくつか有りますが、ギターから生まれるノイズではこれが一番手間の掛かる物になる場合も有ります。私が一番行う事は集めのスポンジをピックアップの下、キャビティ内に入れる事です。沢山の場合これでピックアップの動きを抑えられるのでハウリングが止まります。これでも止まらなければ、二つ目、さらには3つ目のスポンジを入れなければいけないかもしれません。スポンジの入れすぎでピックアップの高さが調整できないとならなければ大丈夫なはずです。
しかしながら、スポンジだけがピックアップの動きを抑える方法では有りません。例として伝説のギターリスト、Dimebag Darrellは彼の仕様で有名な”Dean From Hell”のギターのネックピックアップに絶縁テープを使っている様です。
でも正直に言うと、Dimeのギターに付いているこのテープの理由がそれかはわかりません。しかし他のクリエイティブなギターリストが同じ事をしているのも見た事があり、同じ理由なんじゃないかと思っています。実際はギターの表面にテープを付けただけじゃ私のお客さんは満足してくれないので私は普通スポンジを使っています。
最後にこの現象に対してですが、もし貴方がカバーのついているハムバッカーを使っているならばこのスポンジは問題を解決しないかもしれません。何が起きるかというと、このカバー自体が中身(ピックアップ)抜きにして動いている可能性が有るからです。もしカバーが付けられているハンダが沢山付いていたら面倒なんですよ。残念ですがこの場合はカバーを取り外すしか有りません(言いたい事は分かりますよ...)。それ以外では上記に説明した様にワックス浸けをカバーが付いたままで行い、穴の空いてる部分は全て耐熱テープで塞ぎます。これによって、ワックスから取り出した時にワックスがカバー内に留まる様になります。難しくて大変ですが、これしか方法が無い時は試してみる価値は有ると思います。
5: 弦とスプリング
ギターのノイズの出所としてナットの後ろの共振や(ギブソンスタイルのホローボディーのギターのブリッジの真下もそうです)、トレモロのスプリングの共振も有ります。
これらのノイズは基本的には簡単に抑える事ができます。私は小さい毛羽立った方のベルクロをナットの後ろに入れる時が有ります。目立たないですし、簡単に取り外しもできて、お客さんからも見えないケースがほとんどです。すごく効果的ですよ。
もしギブソンや同じタイプのギターのブリッジの後ろで共振が有るなら、ベルクロを細く切ってブリッジの真横で弦を巻き付ける様に取り付けます。そんなに目立たないかもしれませんし、靴紐を巻き付けるよりは綺麗なやり方です(本当に靴紐は結構よく見るんですよ)
最後にトレモロキャビティの共振の押さえ方です。上記で説明したスポンジと同じ原理です。トレモロスプリングを取り付ける部分の横に薄く切ったスポンジを敷きます。これもとても効果的です。
嵐の後の静けさ
このブログの最後として、一回の情報としては多すぎるかもしれませんが、このブログはどちらかというと参考にできる様なもので、使用している楽器や状況で色々変わり、全てのケースや人に当てはまる物では有りません。個人的な意見も有るでしょうし。例としてトレモロスプリングのあのリバーブが実際に好きだと言う人もいますし、もちろんそれもオッケーなんです。多分… でもダメですよね。
とにかくこの情報が少しでも貴方の必要な物の役に立てばと思っています。ライブやツアーの再開に向けての希望も開けて来てますので(モチロン安全に十分考慮してですよ)。その日は近し!
Lane Sparberはアンプ、ギター、ベースやエフェクターの修理をニューヨークのクイーンズの街、Fresh Meadowsで行なっています。十代の半ばで機材の修理を始めて現在は46歳なので経験の多さが分かります。工房で機材の修理に追われていない時はランの花を育てるのが趣味。@amptech74 インスタグラムとフェイスブック www.facebook.com/lane.sparber で彼をフォーロできます!