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-月刊EQD-

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-月刊EQD-

Yuichiro Hosokawa

<Vol.4>

ブラックアッシュ(ベンダー系ファズ)

<モデル発表日>

オリジナル:2018年12月10日

日本限定復刻:2024年10月26日

<イントロダクション>

ブランドの創始者であるジェイミー・スティルマンにEQDペダルの開発秘話やオススメの使い方などを紹介してもらいながら、エフェクター研究家である細川雄一郎(CULT)の製品レビューを通して製品の魅力を紹介していく連載『Pedal of the Month -月刊EQD-』。第5回目に紹介するのは、トーンベンダーMk.IとMk.IIからアイデアを得たブラックアッシュ(ファズ/オーバードライブ)です。

細川雄一郎(CULT)

世界的にその名を知られる国内屈指のエフェクター蒐集家であり、多種多様なエフェクターを取り扱うペダル・ショップCULTを主宰する細川雄一郎。エフェクターに無償の愛を注ぎ続ける彼にEQDのペダルはどのように映っているのでしょうか?

EQDの伝説のラインナップが
日本限定で待望の復活!!

EQDが好きな外国人の友達の多くは、みんな口を揃えて「Black Ashがファイバリットだ!」と言います。なんだったら「オマエもそう思うだろ!?」というような目で訴えてきます。しかし、ここ日本においてBlack Ashというモデルはさほど知られていません。いや、EQDの伝説のラインナップとして密かに知られている、と言い換えることもできます。

Black Ashはトーンベンダー系のファズ・ペダルで、世界限定1,500台という数だけが作られ、その1,500台が文字どおり瞬く間に完売したという伝説を持っています。そのため日本ではほとんど流通せず、存在すら知らない人もいるかもしれません。それにも関わらず、世界のペダルギークからの評価が非常に高く、海外の中古市場ではプレミア価格で取引されています。そのBlack Ashが急遽、待望の復活を遂げるというのです。

時は遡り、2023年のある日のこと。EQDのスタッフがふと漏らした「Black Ashはコンデンサーが無いから多く作れなかったんだよね」という話を私は聞き逃しませんでした。「え? じゃあコンデンサーがあればまた作れるの?」と訊くと、「作れると思う」との答えが。そのコンデンサーはロシアの軍需用品で、1990年代以前に作られたオールドストックです。そう簡単に手に入るものではありません。しかし、ウクライナに住んでいる個人が大量に所有しているとの情報を得て、僕はその人から400個のコンデンサー(Black Ash 200台分)を調達することに成功しました(写真)。そして「このコンデンサーがあればBlack Ashを作ることができるって言ってたよなぁ!(ドヤァ)」というメールと共にコンデンサーをEQDへと送り、今回の奇跡の復活に繋がったのです(時を同じくしてEQDも同じコンデンサーを手に入れていたようです)。ただし、今回の復活は日本限定で200台のみ。この機会を逃すとまた入手するのが難しくなりそうです。

 

この緑のコンデンサーが再発企画の始まりでした。

 

さて、そんなBlack Ashですが、数あるトーンベンダーの中でもいわゆるトーンベンダー Mk.IIの質感に近く、ファズ然とした荒々しい歪みを作りながら、同時に伸びやかなサステインも生み出します。弾き心地としてはディストーションのような素直さがあるのですが、出ている音はしっかりとしたファズ、そんな質感です。ディストーションのようなファズといえば、EQDにはHizumitasやPark Fuzzもラインナップされていますが、それらよりもファズらしい荒々しさが目立ちます。ただし、音は潰れないという、とても音楽的な1台です。

シリコン・トランジスタを使用している本機ですが、バリバリとしたシリコン的な歪み方ではありません。程よくスムースであり、同時に程よく荒い、絶妙な音色です。特にFuzzコントロールを下げればゲルマニウム・トランジスタで歪ませたような、温かい質感のオーバードライブ・サウンドを作ることができるのも特徴です。Fuzzコントロールを上げると様々な倍音が強調され、音の角が尖ったようにも感じますが、そこはTopコントロールを使って音の角を丸めることも可能です。

今回のBlack Ashには、私が運営するエフェクター専門店“CULT”の限定モデルが用意されています。黒と銀が合わさった、凹凸の激しいリンクル風塗装に白色のグラフィックは、CULT限定モデルのみの外観です。さらには、右側面にはバイアス・コントロールを追加し、歪みの飽和感の微調整から、ブチブチとした特殊効果風の音までを出せるようになっています。こちらは50台限定ですので、ぜひお見逃しなく。

ジェイミー・スティルマン(EQD代表)

EQDの創立者であり、さまざまなバンドで演奏を楽しんでいるプレイヤーでもあるジェイミー・スティルマン。独創的なアイデアをペダルとして具現化させている彼に、ブラックアッシュの開発背景について語ってもらいました。

中身は2018年に発売された物と全く同じで日本のEQDファンの為に。有難う細川さん!

TB系ファズをアップデートして
誕生した限定生産モデル

もともと私はトーンベンダー系のファズのことが大好きだったこともあり、トーンベンダーMk IとMk IIの回路を掛け合わせたファズを作ることができたらおもしろいなというのが、ブラックアッシュを製作するきっかけでした。

まず最初に、状態が常に安定していること、そして生産しやすいことを考慮し、気温によって音質が左右されないシリコン・トランジスタを使うことにしました。ですが私としては、ゲルマニウム・トランジスタ特有の“暖かい”ファズ・サウンドの要素も欲しかったのです。明るく噛みつくようなサウンド・キャラクターのシリコンを使いながら、ゲルマニウムの音の質感を求めるのは、とても難しい課題でした。そのため開発をする中で、本当に多くのトランジスタを試しました。そしてついに私が頭の中で描いていたようなトーンを持つローゲインのトランジスタを見つけたのです。それと同時に、いつか使うかもしれないと大量に購入していたロシア製の“Paper-in-Oil”キャパシターが合うかもしれない、というアイデアをピンとひらめきました。想像したとおり、程よく高域を丸めてくれるPaper-in-Oilキャパシターは、私が求めていた“暖かさ”をブラックアッシュのサウンド・キャラクターに加えてくれました。

設計の最後にこだわったのは、“Top”と呼んいるトーン・コントロールです。これはトレブル・レスポンスの調整に使うコントロールで、高域を丸めてアンサンブル全体に馴染ませるように使います。効き方が地味なコントロールですが、ブラックアッシュの回路には欠かせない要素だと思います。

生産台数は、キャパシターとトランジスタの在庫数に限りがあったため、世界で1500台のみの限定販売となりました。そのすべてが8時間で完売。そのため発売してからの数ヵ月間は、ブラックアッシュを探し求めているプレイヤーからの電話に追われる日々が続きました。

左は細川さんが限定版CULT Pedals Modとして発売。

Jamie’s Favorite Settings

FUZZ:10
TOP:7〜8
LEVEL:適宜

Fuzzは、ほぼフル10。Topは2~3時で、Level はアンプが若干ドライブし始めるくらいに設定します。私の場合、ゲインが高めのアンプで使うのが好きですが、ほかのEQD製品と同じようにどのようなアンプやリグにも良く合いますよ。


細川雄一郎(CULT)

大手楽器店にて約10年間、エフェクターの専任として勤務し、多くの著名なプロミュージシャンから信頼を集め、2016年に独立。並行して担当していた専門誌での連載コラム、各種ムック本などでの執筆活動を続けながら、ギターテックとしても活動。エフェクターのコレクターとしても世界に名を知られており、自身のエフェクター専門ウェブショップ“CULT”を2018年にオープンし、2020年には自身のコレクションに関する書籍『CULT of Pedals』を執筆、リットーミュージックより出版された。ペダル以外にハンバーガーをこよなく愛し、ハンバーガーに関する書籍などにも登場することがある。

 

 尾藤雅哉

2005年にリットーミュージック『ギター・マガジン』編集部でキャリアをスタートし、2014年からは『ギター・マガジン』編集長、2019年には同誌プロデューサーを歴任。担当編集書籍として『アベフトシ / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT』、『CULT of Pedal』など。2021年に独立し、真島昌利『ROCK&ROLL RECORDER』、チバユウスケ『EVE OF DESTRUCTION』、古市コータロー『Heroes In My Life』の企画・編集を手がける。2024年には、コンテンツ・カンパニー“BITTERS.inc”を設立。

 

西槇太一 

1980年東京生まれ。8年間ほどミュージシャンのマネージメント経験を経て、フォトグラファーに転身。スタジアムからライブハウスまで、さまざまなアーティストのライブで巻き起こる熱狂の瞬間を記録した写真の数々は、多方面から大きな支持を集めている。またミュージシャンの宣材写真やCDを始めとする音楽作品のジャケット、さらには楽器メーカーの製品写真の撮影なども手がけるなど、音楽シーンを中心に精力的に活動中。また自身のライフワークとして撮り続けている“家族写真”にスポットを当てた個展も不定期に開催している。