Aaron’s Bass Hole : Why DI?
takahiro tozawa
ライブの時にボロボロの安物のDIをせっかく搬入したSVTのセットの上に置かれた夜ほど最悪な事は無いですよね...。うちらミュージシャンは大金を叩いて理想のトーンを常に追いかけていて、自分の人生を掛けて沢山の機材を入手しています。インスタグラムのRigs Of Doomに採用されるようなデカいスピーカー達をライブハウスの3階までせっかく運んだのに、ヤル気の無いライブハウスのヤツらに安物のDIでセコい音を出された日にゃ...。その気持ち分かります。でも現実には私たちのほとんどが小さい箱やバーで演奏するので、DIのベースサウンドが丁度良い音として扱えるんですよね。それでは、僕の出番です。
The Good: Direct Injection – 基本
DIの略は”Direct Injection”で、他の物として”Direct Input”、”Direct Interface”や”Direct Box”が有りますが全て正解です。どんな呼び方をしても仕事は1つ。貴方のベースのアンバランス、ハイインピーダンスの楽器レベルの信号を、ミキサーに入力するのに必要なバランス、ローインピーダンスのマイクレベルの信号に変換します。
変換の際には良い利点を得る事が出来ます。信号のアイソレーション、グラウンドループからの保護、インピーダンスを揃える事によって、貴方のステージから来るトーンがミキシングコンソールまで行き、そこからさらにPAに出るまでハムやノイズ等から守り、ハイ落ちへの対策にもなります。
DIはいろんなサイズや仕様が有りますが、以下の物が重要な3つの点です。
- 1/4”inputがベースのインプット
- 1/4”thruからの信号が使用するアンプに
- XLR outputがベースの信号をバランスのマイクケーブルを伝わってミキサーに行く
The Bad: “普通にキャブをマイキング出来ないの?”
出来ますよ。それでも自分のDIを持って行きますね。DIのベースの信号を使う利点が以下の物です。
- マイクからの信号よりミキサーにベースの信号を直接送る送る事によって、会場の環境によるベースの濁りをDIにより防げる。しっかり音響の作れていない箱ではステージ上のマイク達は濁った低音や振動、他の楽器の音等どんな音でも拾っていますし、ベースと同じ帯域の音とのぶつかり合いも起きています。
- フィードバックの可能性を少なくする。マイキングした低音に頼るより、DI信号を頼った方が、ミキシングをしている人が低音と中音(400hzより下)を上手く会場に響き渡せる事ができ、マイクされた音の高音域、上の部分のパンチをそれにミックスさせる事が出来ます。マイクからの信号が少なければ少ない程、フィードバックのチャンスも減ります。
- 必要な音はステージ上とステージの外では違う。ベーシストとして自分がステージ上で聞きたい音と、外側にいるお客さんが聞きたい音は必ずしも同じでは有りません。僕がライブをやるときは通常、ベースドラムとボーカルしかモニターに返しません。自分の音は自分のアンプから十分に聞こえてますし、ベースドラムのキックを胸で感じたいのと、ボーカルの邪魔をしたくないからです。これと比べて、ライブのミキシングエンジニアが必要な事は、バンドの各楽器の音を1つにまとめながらも、お客さんと会社の上司を喜ばせなければいけません。
- おそらく小さい会場では、ステージ上の音量は既に会場全体をカバーするのに十分の音量が有るはずです。400百人以上くらいのキャパの会場で無い限り、会場の後ろにいても貴方の音は十分聞こえます。必要以上に音量をそれ以上上げる事は無いかもしれませんが、音的に少しクリアーさを与えた方がよいかも。DIの信号を少しでも混ぜる事によって、サブスピーカーの音にキレを加え、せっかくのイカしたディストーションサウンドを無駄無しに会場に響き渡すことが可能になります。
The Ugly: DIの短所
ベーシストなら聞いた事が有ると思いますが、DIを使うとアンプ側のトーンが変わってしまう事です。これが事実の場合も有ります。パッシブのDIを出力が小さいパッシブピックアップのベースの間に入れるとピックアップの信号に負荷が加わり、結果的に出力が落ちて、ハイ落ち、音の締まりやライブ感が無くなる等の問題が起きます。でもこれを回避する事は可能です。もしアクティブのDIが有ったら、それと交換してください。それで全てオッケーです。
プリアンプの回路を含めて、アクティブのDIは入力された信号をブーストしますので、DIを使用してない状態と同じ信号をアンプに送れます。ダメな音でライブをしなければいけない心配が無くなります。もしアクティブのDIが無ければ、Tone Jobの様なペダルを機材に追加する事をお勧めします。エフェクターの接続順の一番最後に入れる事によって失ったゲインを再度持ち上げる事が出来、アンプやDIをドライブするのにも役立ちます。そして搭載されている強力な3バンドのアクティブEQを使ってどんな音質のロス/補正にも対応出来ます。
場所が全て
DIを信号経路のどこに入れるかでかなりの違いが生まれます。通常DIはアンプの手前に来る一番最後の部分です。現在製造されている殆どのベースアンプはプリアンプステージの後にDIが付いているので、歪みの無いクリーンのベースサウンドをミキサーに送るのにはぴったりです。そして殆どの音楽スタイルにはこれで良いですが、ペダルを多用するとこれがすこし厄介な事になります。オーバードライブやファズは歪んでザラザラした音で、出力もまばらなのでミキシングを難しくします。
信号はベースプリアンプからのLineアウト(一番右下)からボード上にキープしているDIへ(右上)Photo: Bradley Thorla
僕は通常DIをエフェクターやキャブをマイキングする前に、出来るだけ前段に持ってくる事を好みます。これによってピックアップの信号に加わる負荷を後のゲインステージングで調整出来ますし、クリーン/歪み(ベース用等の歪み系ペダルを使用の場合)のブレンドも自由に出来ます。欠点としてはミキシング側に2チャンネル分のインプットが必要になるので、小さい会場等ではちょっと難しい場合も有ります。
僕のステージボリュームは十分に有ると思うので、DI単独ではクリアーさとパンチを補強する様な感じで存在していて、歪んでいるベース音や他のエフェクト音はちゃんとミックスの中では聞こえています。大きい会場では、マイキングされた音は全体のバランスを取る為の物です。最終的に相違の問題も起きますがそれはフェイズスイッチを使って相違を逆にすれば良いだけの簡単な問題です。
音は君の手の中に
もし単純に赤の他人のミキシングエンジニアに音をいじくられたくないならば、市場にはアンプに近い音を出せるペダル式のプリアンプ/DIが多数出ています。それらの物はプリアンプが搭載されていて、3バンドのEQが付いていたり、コンプやオーバードドライブが付いているものも多々有ります。搭載しているプリアンプでベースのライン信号の音を暖かくする事が出来、テレビ等でたまに聴かれるDIだけ通った“覇気の無いベース音”と違い、どこに持って行っても良い音で使えるはずです。ベーシストとミキシングエンジニアとしての僕の経験から言えるのは、この手の物が一番簡単に、ステージ上の弾き手とミキシングエンジニアとのやり取りの中でお互いに欲しい音が見つかる物ですが、一番重要なのは客席(かモッシュピット)に居るオーディエンスに良い音を届けられる事ですね。
このブログ上で紹介したペダル達
Aaron Rogers (アーロン・ロジャース)アースクエイカーのPRでコピーライター。フリーランスのサウンドエンジニアとしても活躍し、バンドUltrasphinxでベースを担当。