Aaron’s Bass Hole : Aqueduct(アクエダクト)
takahiro tozawa
ベースアンプに搭載されてるエフェクトって見ないですよね。せいぜいパッシブかアクティブのインプットの選択くらい。ここ10数年で見るアンプに搭載されているDSPとかそんなのじゃ無いですよ。MagnatoneとかFenderみたいな昔のアンプに搭載されている様な物です。そう、ビブラートAqueductです。
8種のモードが選択可能で便利なフレキシスイッチ機能を搭載。このスイッチは通常のラッチ式にも、アンラッチ式(モーメンタリー式)にもなる物で、スイッチを踏み込んでる間だけエフェクトを効かせるってな事ができちゃう物です。これで単なる“原音とビブラート”を行き来するだけ以外のクリエイティブな使い方が8つのモジュレーションモードで出来ちゃいます。
アクエダクトに搭載されているフレキシスイッチはノート一音とか一小節だけにビブラートを効かせるとか簡単に出来ちゃいます。そして以下のモード、Sine(正弦波)、Triangle(三角波)、Ramp(三角波に似てますが、音の変化がさらに急激)、Square(矩形波)、Random(波形がランダムに変化)、Env D(入力感度によってDepthをコントロール)、Env R(入力感度によってRateをコントロール)、Env P(入力感度によって音程をコントロール)はギターのみならず、ベーシストにも楽しんでいただけるでしょう。フレットレスベースでボーカルの様なメロディーから(これはJuan Aldereteのお得意なので彼に任せましょう)、ブチ壊れたランダムなピッチベンドまで(これはどっちかというと僕好み)。
ビブラート。Fenderアンプに付いてる物ですよね?
違います。これは大きな誤解を産んでますよね。ここで再度確認をしましょう。フェンダーアンプは”Vibrato”を機能の名前に選んでいますが、実はこれ、Tremoloなんです。音量の増減で行うモジュレーションなんです。このエフェクト効果は音量の上下の動きから聞こえてきます。本来のビブラート、弦楽器の弦を動かした時に聞ける様な物は、音の波長の動きの大きさによって起り、それがピッチの揺れになって耳に届きます。それではこの誤解はどうやって始まったのか?
1954年にフェンダーが最先端のギターとして発表したStratocaster、売り文句の1つに”Tremolo Action”って言葉が出てきます。勿論これは6弦を同時にベンド出来て元のピッチに戻せるアノ部分、ブリッジの事です。宣伝文句のカギになる“ピッチ”の部分ですが、フェンダーのマーケティング部門が“Vibrato Actuon”よりも“Tremolo Action”を選択した所からこの混乱が始まっているんですね。それでも今までこの“トレモロ”と“ビブラート”は互換性の有る言葉の様に使われていますよね。
それではアースクエイカーデバイセスは何をしてくれるのかって?
アクエダクトはアンプのビブラートの代わりに直ぐなる様なシンプルな物ですが、可変幅の広さを利用して深く掛ければ新しい音楽のアイデアのインスピレーションになる様な物に、そこからさらに深く行くと今までのビブラートペダルで体験した事の無い所へ行けます。
まず最初の4つのモード:Sine、Triangle、Ramp、Squareの音は今までモジュレーション系のペダルやシンセをいじった事の有る人なら聞き覚えの有る音だと思います。この4つのモードは選択された波形の種類でLFOがピッチを変化させます。Sineは滑らかなビブラートでアンプに搭載されている様な物ですね。Triagleはコーラス感も出て来て、音の動きがシャープな感じに聞こえるはずです。Rampはシンセに付いてる機能のSustainとReleaseっぽく音の上下も激しくなり、ドラマチックに聞こえるかも。Squareはピッチが上下するノート間をジャンプするのでギターでいうハンマリングとプリングの様な効果です。
Random モード:これは名前のままでどの波形にも属さない様な音。入力された信号のピッチをランダムに変化させて、薄く掛けると少し歪んだレコードや伸びたテープの様なノスタルジックなピッチの変化が楽しめて、深く掛けるともうぐちゃぐちゃでどうしようも無く面白いです。酔拳の状態がこれです。
残りの3っつは入力信号の強弱でコントロール出来るRate、Depth、Pitchになります。Env Rのモードでは強くピッキングをする程ビブラートの動きが早くなり、その後音が減退すると同時にビブラートのスピードも徐々に遅く有ります。Env Dはピッキングの強さによってピッチの上下の動きの深さをコントロール。そしてEnv P、こちらは当社では“マイブラモード”と呼んでいて(しっかり説明書にも書いちゃっております)まさしくギターに搭載されているトレモロの様な効果がえられます。
では実際に音はどう?
アクエダクトのSineはアンプに搭載されている通常のビブラートの様な音なので皆さんは既にご存知かと思います。フレットレスベースを使用時のメロディーにモジュレーションを与える事によってまるで人の声の様な音に変える事が可能です。Pedals and Effectsのホアンのビデオを見て頂けると分かってもらえると思います。
さてここからが僕の出番。以下のサウンドサンプルではElectric Guitar CompanyのSeries Oneベースをアクエダクトに入れて、TronographicのRusty BoxプリアンプとTech 21のSansAmp RBIを通してます。そこから直接Universal AudioのインターフェイスApolloに入って、Pro ToolsのUnison Neve Preampnのプラグインを使用してます。マスターフェーダーにMassey L2007のリミッタープラグインを使用していますがそれ以外は信号上には何も加えたものは有りません。
Ex 1
このサウンドサンプルではアクエダクトはTriangleモードで、シーソーの様なビブラートがリズミックなダブルストップに上手く乗っています。
Ex 2
こちらはランダムモードに設定。これがさっき説明した酔拳モードです。ハーモニックをタッピングで出しています。
Ex 3
Sineモードに設定。シンプルなロックのベースラインと昔ながらのアンプの様な定番のビブラートが聞けると思います。